「社員が本音を言ってくれない」「異業種交流会で名刺交換はするのに、その後が続かない」——北九州・福岡の経営者の方からよく伺う2つの悩みは、実は同じ原因から生まれていることが少なくありません。結論から言うと、経営を変えるのは「話す力」より「聞く力」です。社員の本音も、お客様からの紹介も、よく聞く経営者のところに集まります。

この記事では、2015年からBNI北九州東リージョンのフランチャイズを運営し、約10年で延べ2,000人を超える経営者の方と関わってきた経験をもとに、聞く力がない社長の5つの特徴と、傾聴力を今日から鍛える5つの実践法を解説します。読み終えたときには、自分が「聞けていない場面」がどこかが具体的に分かり、次の会話から試せる行動が1つ手に入ります。

聞く力がない社長の5つの特徴——セルフチェック

まず、自分がどれくらい「聞けているか」を確認してみてください。BNIのチャプターや研修の場で、紹介が集まらない・社員が定着しないと悩む経営者の方に共通していたのは、次の5つです。

3つ以上当てはまる場合は、要注意です。社員が発言しなくなる組織の背景には、この「聞いてもらえない経験」の積み重ねがあります。詳しくは中小企業に心理的安全性が必要な3つの理由をご覧ください。

なぜ「聞く力」が社員の本音と紹介の両方を引き寄せるのか

聞く力は「優しい社長になるため」のスキルではありません。社内と社外の両方で、経営の数字に直結する力です。

社内では、悪い知らせが上がってくる速さが変わります。クレームやミスの報告が1日遅れるだけで、対応コストは何倍にもなります。社員が悪い知らせを早く上げるかどうかは、「前に話したとき、最後まで聞いてもらえたか」で決まります。私が見てきた中で、離職の本当の理由が退職面談で初めて出てくる会社は、ほぼ例外なく社長が「聞けていない」会社でした。

社外では、紹介の量が変わります。リファーラルマーケティングにおいて、紹介は「相手のニーズを聞き取った人」にしか出せません。BNIの基本理念Givers Gain(与える者は与えられる)は、まず自分が紹介を出すことから始まりますが、相手がどんなお客様を求めているかを聞いていなければ、出しようがないのです。逆に、よく聞いて相手を理解した人は紹介を出せる。出すから返ってくる。このリファーラル・サイクルの入口は、常に「聞く」ことにあります。

実際、BNIのワンツーワン(1on1)で紹介を生み出しているメンバーを観察すると、自分が話す時間と相手の話を聞く時間の比率がおよそ3対7です。紹介が出ない人はこの比率が逆転しています。「自社の強みを伝える力」は経営者の言語化力の記事で解説しましたが、伝える力は聞く力と対になって初めて成果になります。

経営者の傾聴力を鍛える5つの実践法

聞く力は才能ではなく、練習で伸びる技術です。北九州・福岡の経営者の方に実際に試していただき、効果が出やすかった順に5つ紹介します。

実践1:相手が話し終えた後、3秒待つ。最も簡単で、最も効果があります。人は話し終えた直後に「本当に言いたかったこと」を付け足すことが多く、3秒の沈黙がその続きを引き出します。DiSC理論で言う主導型(D)の傾向が強い経営者ほど、この3秒が苦手ですが、だからこそ効きます。

実践2:「なぜ」を「何が」「どうすれば」に言い換える。「なぜ遅れた?」ではなく「何が遅れの原因になった?」「どうすれば次は間に合う?」。主語を人から出来事に移すだけで、詰問が質問に変わり、社員は事実を話せるようになります。

実践3:要約して返す。「つまり、納期より品質を優先したいということ?」と、聞いた内容を自分の言葉でまとめて確認します。オウム返しよりも「理解しようとしている」ことが伝わり、相手は食い違いをその場で直せます。

実践4:メモを取り、1週間後に戻す。「先週言っていた〇〇の件、その後どう?」——この一言で、社員は「社長は聞いただけでなく覚えていた」と感じます。聞く力の信頼は、聞いた瞬間ではなく、その後の行動で決まります。

実践5:週1回、「自分の話をしない30分」を社外でつくる。社内では立場上どうしても社長が話す側になります。だからこそ、経営者交流会やBNIの1on1など社外の場で、相手の事業・困りごと・理想のお客様を聞くことだけに集中する30分を設けてください。これは傾聴の練習であると同時に、紹介を出すための情報収集でもあります。

「聞いているつもり」で失敗する3つのパターン

聞く力を意識し始めた経営者の方が、次にはまりやすい落とし穴が3つあります。

失敗1:聞く=うなずくだけで、決めない。傾聴を「意見を否定しないこと」と誤解すると、判断が先延ばしになり、かえって社員の不信を招きます。聞くことと決めることは別の仕事です。聞いた上で決め、採用しなかった意見には「なぜ今回は採用しなかったか」を伝える。これで初めて「聞いてもらえた」が成立します。

失敗2:聞いた意見をすべて取り入れようとして振り回される。小倉の製造業の社長で、社員の声を聞き始めた途端に方針が毎週変わり、現場が混乱した例がありました。聞く力の目的は、判断の材料を増やすことであって、判断を手放すことではありません。経営者のぶれない軸があってこそ、聞く力は活きます。

失敗3:社内でだけ聞いて、社外では聞かない。社員は、どれだけ関係がよくても社長に遠慮します。社長自身が率直な指摘をもらえる相手は、社外の経営者仲間やメンターです。自分の話を聞いてもらう場を持っている経営者ほど、人の話も聞けるようになります。

まとめ——今日の最初の会話で「3秒」待つ

最後に要点を整理します。

今日からできることを1つだけ挙げます。この記事を読んだ後、最初に交わす会話で、相手が話し終えてから3秒待ってみてください。その3秒で出てくる言葉が、社員の本音であり、紹介のヒントです。

「社外で聞く力を鍛える場がほしい」「紹介が生まれる1on1を体験してみたい」という北九州・小倉・福岡の経営者の方は、ぜひ一度お問い合わせください。BNI北九州東リージョンの各チャプターでは、朝会の見学を無料で受け付けています。メンバー同士がどのように相手の話を聞き、紹介を出し合っているかを、その場でご覧いただけます。