原材料費も人件費も上がっているのに、見積書の数字だけが5年前のまま。そんな中小企業の経営者の方は少なくありません。
結論から言うと、値上げできない原因のほとんどは、社長自身の「思い込み」にあります。そして思い込みを外す最短ルートは、営業の入口を「価格で選ばれる集客」から「人で選ばれる紹介」に変えることです。2015年からBNI北九州東リージョンを運営し、延べ2,000人を超える起業家を見てきた中で、これは繰り返し確認してきた法則です。この記事では、値上げを止めている5つの思い込みと、具体的な進め方を解説します。
値上げできない本当の理由は「価格」ではない
中小企業庁や日本商工会議所が毎年公表している調査では、コスト上昇分を「全く価格転嫁できていない」「一部しかできていない」と答える中小企業が、いずれの年も過半数を占め続けています。つまり、値上げに踏み切れないのはあなたの会社だけの問題ではありません。
ただし、同じ業種・同じ地域でも、堂々と適正価格を提示できている会社は必ず存在します。北九州・小倉で製造業や建設業の経営者と話していても、この差は技術力の差というより「誰から仕事をもらっているか」の差であることが圧倒的に多いのです。
相見積もりサイトや飛び込みで獲得した客先は、比較の土俵が価格しかありません。一方、信頼できる人からの紹介で来たお客様は、最初から「あなたに頼むこと」が決まっています。入口が違えば、価格の会話そのものが変わります。
値上げできない社長の5つの思い込み
思い込み1:値上げしたら全部のお客様が離れる。実際には、値上げを告げて離れるのは一部です。仮に1割の取引先が離れても、残り9割に15%の値上げが通れば、粗利は増え、手離れの悪い仕事は減ります。「全員に嫌われる」という恐怖は、たいてい実測ではなく想像です。
思い込み2:うちの価値は言わなくても伝わっている。納期を守る、細かい要望に応える、夜でも電話に出る——長年の取引先ほど、それを「当たり前」として認識しています。伝えていない価値は、存在しないのと同じです。まずは自社の強みを短い言葉にする必要があります(経営者の言語化力を高める5つの方法で詳しく解説しています)。
思い込み3:安いことが自分の存在価値だ。これが最も根深い思い込みです。価格でしか選ばれない会社は、より安い会社が現れた瞬間に置き換えられます。安さは、他社が真似できる唯一の強みなのです。
思い込み4:値上げ交渉は敵対的なやりとりだ。値上げは相手を負かす交渉ではなく、「この品質を来年も続けるための報告」です。この認識を変えるだけで、伝え方の温度が変わります。
思い込み5:新規が取れないから既存に頼るしかない。これは思い込みというより、営業の構造の問題です。新規が安定して入る見込みがあれば、社長は強気になれます。だからこそ、値上げの前にリファーラルマーケティング(紹介営業)の土台を作るべきなのです。
紹介で来たお客様は、なぜ値切らないのか
紹介案件が値切られにくい理由は、3つあります。
- 信用の前払いが済んでいる:紹介者という第三者が、あなたの信頼性を保証した状態で商談が始まります。相手は「本当に大丈夫か」を価格で測る必要がありません。
- 比較対象がいない:相見積もりの土俵に最初から乗っていないため、判断基準が「価格」から「課題が解決するか」に移ります。
- 紹介者の顔を潰せない:値切って関係を壊すことは、紹介してくれた人への不義理になります。これが無言のブレーキとして働きます。
BNIでは、こうした紹介が生まれる流れを「リファーラル・サイクル」と呼びます。そして土台にあるのが「Givers Gain(与える者は与えられる)」——まず自分が相手のために紹介を出す、という考え方です。北九州・福岡のチャプターでも、毎週の朝会と1on1(メンバー同士の個別面談)を通じて、価格ではなく人で選ばれる案件が着実に積み上がっています。
値上げの進め方3ステップと、やってはいけない伝え方
ステップ1:取引先を粗利で並べ替える。全取引先を粗利率順に並べると、たいてい下位2〜3割が全体の利益をほとんど生んでいないことがわかります。まずはここから着手します。
ステップ2:新価格表を先に作る。「いくらなら適正か」を決めてから交渉に入ります。逆にすると、相手の反応に合わせて値引きしてしまいます。
ステップ3:3〜6ヶ月前に、文書と対面の両方で伝える。突然のメール1本は信頼を損ないます。書面で事実を、対面で意図を伝えるのが原則です。
一方で、次の3つは避けてください。
- 「他社も上げているので」と他責にする:自社の判断として説明できない値上げは、軽く見られます。
- 謝りながら伝える:申し訳なさそうに切り出すと、相手は「交渉の余地がある」と受け取ります。
- 値上げと同時にサービスを削る:値上げの理由は「品質を維持するため」です。同時に質を下げれば、説明が成立しません。
まとめ|価格を上げる前に、入口を変える
値上げは、勇気の問題に見えて、実は営業の入口の問題です。価格で選ばれる入口しか持っていない会社は、永遠に値上げを怖がり続けます。逆に、紹介で仕事が入る仕組みを持てば、「この価格でお願いしたい」と言われる側に回れます。
今日できる一歩は、価格表を作り直すことではありません。あなたの仕事を心から推してくれる人を、あと3人増やすことです。そこから、価格競争の外側にある市場が開きます。
リファーラルマーケット株式会社では、北九州・小倉を中心に、紹介が生まれる仕組みづくりの支援と、BNI北九州東リージョンのチャプター見学の受け入れを行っています。「値上げできる会社」の作り方を具体的に知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。