「うちの売上は、社長の私と営業部長の2人でほとんど作っている」——北九州・小倉で中小企業の経営者と話していると、必ずと言っていいほど出てくる悩みです。結論から言えば、営業の属人化は個人の能力の問題ではなく、紹介が生まれる経路が「人の頭の中」にしか無いことが原因です。だから、エース社員が辞めた瞬間に売上が消えます。
本コラムでは、BNI北九州東リージョンを2015年から運営し、約10年で延べ2,000人以上の経営者を見てきた現場経験から、中小企業の営業が属人化する4つの原因と、それを「紹介が組織で回る仕組み」へ変える具体的な手順を、北九州・福岡の実例と数字で解説します。読み終えるころには、来月から社内で何を変えればいいかがはっきり見えているはずです。
中小企業の「営業の属人化」とはどういう状態か
営業の属人化とは、売上が特定の個人の人脈・勘・経験に依存していて、他の人が同じ結果を再現できない状態を指します。中小企業では珍しいことではなく、むしろ標準と言ってもいい状況です。
わかりやすい判定方法があります。「エース社員が明日から3ヶ月休んだら、売上は何割減るか」と自分に問いかけてみてください。ここで「半分は消える」と答えが出るなら、その会社の営業は完全に属人化しています。北九州の従業員20名前後の企業では、売上の6〜7割を上位2名が作っているというケースが実際に多く見られます。
ここで注意したいのは、属人化そのものが悪ではないという点です。創業期は社長個人の信用で仕事を取るのが正しい。問題は、会社が10名を超えても営業の入口が社長の頭の中だけにあることです。その状態では、社長が現場を離れられず、次の成長ステージに進めません。
営業が属人化する4つの原因
2,000人以上の経営者を見てきた中で、営業が属人化したまま抜け出せない会社には共通する4つの原因がありました。
原因1:顧客との関係が「会社」ではなく「個人」についている
1つ目は、お客様が会社ではなく担当者個人を信頼している状態です。「〇〇さんだから頼んでいる」と言われるのは名誉なことですが、裏返せばその人が抜けた瞬間に取引も消えます。関係が個人の携帯電話の中だけで完結していないか、確認してみてください。
原因2:紹介が「たまたま」で終わり、経路が記録されていない
2つ目は、紹介がどこから来たのかを誰も記録していないことです。「今月はいい紹介がありました」で終わってしまい、誰の・どんな一言が・どの案件につながったのかが残らない。経路が見えないから再現できず、次もまた運頼みになります。紹介の流れを設計図にする方法は紹介が生まれるきっかけの地図づくりでも解説しています。
原因3:営業の言葉が社内でバラバラ
3つ目は、「自社が何屋で、どんな客を求めているか」の説明が人によって違うことです。社長は「課題解決型のパートナー」と言い、若手は「価格が安いのが強み」と言う。これでは社員も取引先も、誰を紹介していいか判断できません。言葉が揃っていない組織に、紹介は流れ込んできません。
原因4:営業が「個人競技」として評価されている
4つ目は、成果を個人の数字だけで測っていることです。個人予算だけを追わせると、社員は自分の案件情報を抱え込みます。情報を共有した人が損をする評価制度のもとでは、属人化は制度によって強化されてしまいます。
属人化を解消する「紹介が回る組織」の作り方
では、どう変えるのか。答えはシンプルで、優秀な個人の頭の中にあるものを、チームで回せる形に取り出すことです。北九州・福岡の経営者が実際に成果を出している手順を3つに絞って紹介します。
ステップ1:週1回、全員が「探している客」を1つだけ言う場を作る
まず、週に一度15分でいいので、社員全員が「今週こんなお客様を探しています」と1つだけ発表する場を作ってください。「小倉北区で従業員10〜30名の製造業の社長」のように具体的に。これはBNIのウィークリープレゼンテーションを社内に移植したものです。詳しくはBNIの60秒プレゼンで紹介を増やす5つのコツをご覧ください。
ステップ2:紹介の経路を1枚の紙に記録する
次に、成約した案件について「誰から、どんな会話をきっかけに来たか」を1行だけ記録します。高価なシステムは不要で、表計算ソフト1枚で十分です。3ヶ月も続けると、自社の売上がどの人間関係から生まれているかが可視化され、勘だった営業が地図に変わります。この考え方の全体像は紹介が自然に生まれる仕組みの3ステップで詳しく扱っています。
ステップ3:与えた人が評価される仕組みに変える
3つ目が最も重要です。自分の案件を仲間に渡した人、他の社員に紹介をつないだ人を評価する項目を作ってください。BNIが20年以上掲げる『Givers Gain(与える者が受け取る)』——まず与える人が結果的に最も多く受け取るという原則です。評価制度がこの原則と逆を向いている限り、社員は情報を抱え込み続けます。組織文化としての定着方法は紹介が生まれる組織文化の作り方で解説しています。
やってはいけない属人化解消の3つの失敗
一方で、良かれと思って着手した属人化解消が、かえって現場を壊してしまう例も見てきました。典型的な3つの失敗を挙げておきます。
失敗1:エース社員からいきなり顧客を取り上げる。「属人化解消だ」と担当を強制的に外すと、本人のモチベーションが下がるだけでなく、お客様まで離れます。まずは同行や引き継ぎメモから始め、半年かけて移すのが現実的です。
失敗2:ツールを導入して満足する。顧客管理システムを入れれば属人化が解けるわけではありません。入力する文化が無ければ空欄が並ぶだけです。仕組みより先に、共有する習慣を作ってください。
失敗3:社長自身が抱え込んだまま社員にだけ求める。社長が自分の人脈を誰にも見せずに「お前たちは共有しろ」と言っても、まず伝わりません。最初に手の内を開くのは社長——これが最短ルートです。経営者が孤立しがちな構造については経営者の孤独とネットワークもあわせてご覧ください。
まとめ:営業を「人」ではなく「仕組み」に載せる
中小企業の営業が属人化する4つの原因——関係が個人についている・紹介の経路が記録されていない・営業の言葉がバラバラ・個人競技として評価している——は、いずれも「紹介が生まれる経路が誰かの頭の中にしかない」という一点に行き着きます。
解決策は、エースを否定することではありません。週1回探している客を言葉にし、紹介の経路を記録し、与えた人を評価する。この3つを回すだけで、個人の人脈は少しずつ組織の資産に変わっていきます。そもそも紹介という手法がなぜ強いのかは、リファーラルマーケティングとは?で基本から解説しています。
「営業を社長個人から卒業させたい」「北九州・福岡で紹介が組織で回る仕組みを学びたい」という経営者の方は、毎週人前で事業を言語化し、仲間から紹介を受け取るBNI北九州東リージョンの朝のチャプターを一度体験してみてください。名刺交換で終わる異業種交流会とは違う、紹介に特化した仕組みを地元で直接ご覧いただけます。ご相談はお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。